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視える世界を超えて エピソード6:月夜 その⑩

「勝っ…………た……?」
少女は放心しつつ呟いてから、緊張の糸が切れたかのように倒れ込んだ。
風化を解除した鎌鼬が少女に近寄り、その背中をつついたが、反応は皆無であった。
「わー……完全に気ぃ失っちゃってますよこの子。師匠ぉー?」
怪異の死骸の方に呼びかけると、その後ろから先ほどまで怪異を捕えて動かないよう止め続けていた種枚が顔を出した。
「まァ、こんなデカい仕事終わらせたんだ。ゆっくり休みゃ良い」
種枚は死骸に刺さっていた刀を抜き、少女の前に放り投げ、少女の髪を掴んで顔を覗き込んだ。
「…………師匠? まさかその子、食ったりしませんよね?」
数分、微動だにせず少女の顔を眺め続けていた種枚に、鎌鼬が恐る恐る尋ねた。
「あァ? 馬鹿言え、お前じゃ無いんだぞ?」
「いや別に俺も人間獲って食うような真似した覚えは無いッス」
「お前が覚えてないだけだよ馬鹿息子め」
「……え? いや待って師匠? 俺、何かやらかしてたんですか?」
動揺する鎌鼬には反応を返さず、種枚は少女の頬や頭を軽く叩き、身体を揺すり、起こそうとしていた。
「…………ん……?」
しばらく揺さぶられ続け、ようやく少女が目を覚ました。
「起きたかイ。おはよう、お疲れ様」
歯を見せるように笑いかけた種枚に、少女は一瞬怯えたような視線を投げた。髪を乱暴に掴まれ頭を持ち上げられている状態では、致し方ないことであろう。

  • 視える世界を超えて
  • 鎌鼬くんはちゃんと無実です
  • 種枚さんちょっと雑くない?
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