夜、日が暮れて暫く経った後。
かすみが客のいなくなった喫茶店内を箒で掃き掃除していると、店の裏口のインターホンがピンポーンと鳴った。
「?」
今喫茶店の主人は1階にはいないため、応対できるのは1階にいるかすみだけである。
こんな時間に誰だろうと思いながらかすみは店の奥に向かい、裏口の戸を開ける。
そこには見慣れない女が立っており、後ろには物々しそうな男が2人立っていた。
「こんな時間にすみません」
“鵜沼(うぬま)さん”はいらっしゃいますか?と女はかすみに尋ねる。
「いますけど…ここのマスターに何か用ですか?」
かすみが不思議そうに答えると、女は淡々と告げた。
「ちょっと鵜沼さんと我々だけで話したいことがありまして」
彼を呼んでくれませんか?と女はかすみに言う。
「あ、はい」
かすみはぱたぱたと2階へ行き、喫茶店の主人を1階へ連れてきた。
「こんばんは」
裏口へとやってきた喫茶店の主人である老人がそう女たちに挨拶すると、女たちはこんばんはと返しつつぴしりと背筋を正す。
「それで、なんのご用でしょう」
主人がそう聞くと、女はこう答える。