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視える世界を超えて エピソード7:潜龍 その⑤

「……外が騒がしくなってきたねェ」
“潜龍神社”の本殿、その中で厳重な拘束を受けながら、種枚は祭りの喧騒を聞いていた。
「残念なことだ、私、お祭りの雰囲気は好きなんだぜ? 人間どもが心底楽し気で、慌ただしくて…………しかしまァ」
扉から視線を外し、自身を拘束する道具類に目をやる。
両手首を拘束し、大黒柱の裏を通って腕の動きを妨げる錠。両足を床面に固定拘束する枷。全身に巻かれた荒縄と鎖。無理に振りほどこうとすれば身体に食い込むよう、手足と首にきつく巻かれた有刺鉄線。怪異に対して威力と拘束力を持つ紙製の札と木札、注連縄。そして、両手と両足を貫き縫い留める、4本の短刀。
「本ッ当に、厳重だねェ。私が何であろうと、意地でも逃がさないって感じだ」
拘束を眺めるのをやめ、再び屋外に通じる引き戸に目をやると、数秒遅れて静かに戸が開いた。
「おっ、やっと出してくれるのかい? 私も祭りを楽しみたいんだが?」
「許すわけが無いだろう、鬼子め。貴様がまた逃げ出しでもしないかと巡視に来ただけだ。こちらも忙しいのでな」
尊大な態度で答えるその青年に、種枚も挑戦的に睨んで応えた。
「……しかしまあ、前に捕まえた時と比べて随分とアクセサリィが増えたな? 素敵な持て成しじゃないの」
「2週間も拘束していて、水の一滴すらやっていなかった状態から逃げられたんだ。これでも足りないくらいだろう」
「あァ、あの時はしんどかったなァ」
「……そして今回は、そろそろひと月になるか?」
「そうだねェ。さすがに空腹がキツいや」
「……化け物め」
青年はそう吐き捨て、本殿から出て行った。

  • 視える世界を超えて
  • 種枚さぁん⁉
  • Q.種枚さん本当に人間? A.何度も言ってるべや
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