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フガクイッケイ

通路を挟んで隣の席から「富士山が見えるよ!」と声をかけられた。私は背筋を伸ばして窓の遠くを覗く。どこにあるの?「ほら、富士山!すごい!」私には見えない。諦めてダランと座る。ふと横を見ると、低くなった目線でようやく富士山がわかった。さっきまでの高い目線だと、窓枠の、さらに上にてっぺんがあって、見えなかったのだ。いや、実は見えてる景色全部が富士山だった。暖かい冬のせいで積もる白が少ない山頂を見上げ、(あ、私は今太宰治と同じ気分だ)などと思う。(勝てないなあ。自然には、勝てないもんだなあ)

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