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深夜の迷子 日没

「ど、どうしよう…」
山の中で、肩くらいまでの茶髪を落ち着きなくいじりながら『ゆず』は呟く。
彼女は今日、山奥の集落に住む祖父母に会いに行き、帰る…はずだった。
ゆずの自宅と祖父母の住む集落を隔てる山はなだらかだが迷いやすい。それに重ねてゆずは方向音痴なので、必ず両親と共に行くようにしているのだ。しかし、今日はゆずが一瞬目を離した隙に両親は忽然と姿を消し、見事に迷子になってしまったのである。
「う〜…」
ゆずはそわそわと空を見回す。すでに太陽は西へ沈んでしまっているようだ。迷子になってから数時間、少しも景色が変わっている様子はない。
「ん…あ!」
ゆずの目にきらりと希望が戻る。前方に人を見つけたのだ。
「あ、あのっ」
「ん?」
小柄な子供が頭を上げた。黒い大きな目がゆずを見、暫くして勢いよく立ち上がってゆずの手を握った。
「迷子?奇遇だな、私もなんだ」
「えっ?」
「夜は危ない、一緒に下山しよう」

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