「……なァ君。本気で私を止める気でいるのかい?」
殺気を維持したまま、種枚さんが問いかけてくる。
「…………」
答えることはできない。ただ、睨み返すことで意志を伝える。
「こっちとしては、先に君を始末してから、ソレを殺したって構わないんだぜ?」
種枚さんが1歩、こちらに近付いてくる。彼女の足跡からは小さく火が上がっている。
「何なら、君を躱して直接ソイツをぶっ殺したって良い」
また1歩。
「君1人、そこに突っ立っていたところで、私には何の障害にもならないんだよ」
更に1歩。
「そこで無駄に寿命をすり減らすよりは、大人しくその妖怪を引き渡してくれた方が良いんじゃないか?」
更に1歩。既に種枚さんは、自分の目の前までやって来ていた。彼女の放つ熱気と殺意が、ひしひしと伝わってくる。
「……そこを退け」
たった一言だったけれど、彼女の言葉はとても重く響き、思わず従ってしまいそうになる。
「……ねえ千葉さん?」
離れそうになった自分の足を止めたのは、背後から投げかけられた白神さんの言葉だった。ガサリ、と彼女が立ち上がる音も聞こえる。