「…………ああクソ、おいシラカミ」
種枚さんが白神さんに呼びかける。その声色に、先ほどまでの純粋な殺意は感じられなかった。
「あれ、どしたのクサビラさん」
「お前、その子に感謝しろよ。私が目ェ掛けてる人間がこんなに意地張るから、仕方なく折れてやるんだからな」
「もちろん!」
「それから、君」
種枚さんの恨めしそうな視線が、こちらに向けられる。
「な、何でしょう」
「後悔することになるぜ。妖怪に気に入られやがって……私だって君にずっとついていてやれるわけじゃ無いんだからな」
「いや、別に……」
「お前、分かってないな?」
何を、と問い返そうとして、それは白神さんに遮られた。後ろから抱き着かれ、その上急に高く持ち上げられたのだ。
「し、白神さんやめて」
「千葉さあああん! 千葉さんはわたしの命の恩人だよ! 本っ当にありがとう! この御恩は一生かけてでも返すよ!」
「白神さん、痛い……」
白神さんの力が、ではなく、溜め込んだ静電気が。
「だから言ったのに。怪異に気に入られたんだ。タダじゃ済まないぜ?」
種枚さんが呆れ顔で言ってきた。
「……後悔、しないよう努めます」