種枚さんに言われた市民センターの集会室に入ると、既に先客が一人いた。
「あ、キノコちゃんのお気に入りだ」
「犬神ちゃん、久しぶり」
「うん久しぶりー。それ誰?」
「友人の白神さん。白神さん、この子は犬神ちゃんです。種枚さんの……友達?」
「それで良いや」
適当に答えて、犬神ちゃんは長机を並べ始めた。
「今日はキノコちゃんのお気に入りを合わせないで5人来る予定なんだって」
……そういえば、犬神ちゃんには名前が伝わっていなかったような。
「自分は千葉というんですよ、犬神ちゃん」
「へー」
聞いているのかいないのか分からない返事をしながら、犬神ちゃんは長机とパイプ椅子を並べ終えた。
そして、それとほぼ同時に、また部屋に一人入ってきた。
「……⁉」
神社で会ったあの男性だ。驚愕したような目は白神さんの方に向けられている。種枚さんにあんなことをする人だ。あの時の言い方からして、白神さんにも何かするかもしれない。一応、庇うように彼女の前に出る。
一瞬場に緊張が走ったけれど、それはすぐに、また新たに部屋に入ってきた三人組に解除された。