ミドリちゃんの方に向き直ってみると、彼女は回り込むようにして私と一定の距離を保ちつつ、倒れたアオイちゃんに駆け寄った。
「アオイちゃん! 無事?」
「何とか……威力はそんなに無かったっぽい」
「良かった……」
ミドリちゃんがこっちを睨みつけてくる。
……しかし、これ以上撃たれるのも嫌だし、いつまでも戦い続けるのも面倒だな……。
「…………もう、終わらせようか」
私に残ったイマジネーションを確認する。貯蓄は十分。
棍棒を投げ捨てる。4脚を開いて強く踏みしめ、機械腕を大きく真横に広げる。
「……〈Iron Horse〉」
脚部と両腕の機械装甲が捻じれ膨らみ、私の全身を少しずつ覆い隠していく。『鎧』として、そして、敵を殺す『刃』として。変形しながら形成されていく。
「〈Bicorne〉」
最後に頭部が完全に覆われる。額からは大きく湾曲した悪魔のような角が2本。鋼鉄故の黒色の装甲も合わさり、これじゃあ丸っきり見た目が化け物だ。
「ま、良いか。今日のところはここで退散してね」
全力を4脚に注いで踏み切り、機械装甲の補助によって全身のバネの力が100%乗った加速で2人に接近する。
アオイちゃんが咄嗟に前に出て防御しようとしたみたいだけど、今の私には関係ない。闘牛の角のように構えた腕の片方で引っかけるように轢き飛ばし、ついでにその後ろにいたミドリちゃんも巻き込んで吹き飛ばした。
「…………ふぅ」
2人が見えなくなるまで飛んでいくのを待ってからブレーキをかける。
「ひゃく……いや300mくらいは飛んだかな?」
〈Iron Horse : Bicorne〉を解除し、2人の飛んでいった方を眺める。これだけ痛めつければ、今日のうちくらいはこれ以上突っかかってこないだろう。刃は立てなかったからきっと生きてるだろうし。そんなことより、散歩を再開しようか。