「え?」
「言動から推察するに、お主の言う『父』は、お主をこの様な目に合わせた男でありんしょう。なのに、帰らなければ、などと、何故思いんすか。」
.....言われてしまうと、よくわからなくなった。
そもそも、「帰らなくては」と思っていても、何処へ帰ろうとしているのか、誰の下へ帰ろうとしているのか、さっぱりわからない。
先刻はお義父さんのところ、と言ったが、自分には、実の両親はおろか、義理の家族すら居ない。
とりあえず、その旨を伝えると、紅さんは驚いた顔をした。
「そんな...まさか。寝言であれ程、帰る、帰らなくては、と繰り返していたのに?不思議な事もありんすねぇ...」
「そう、なの?」
紅さんは大きく頷いて続けた。
「『お義父さん達のところに帰らなきゃ』と、しきりに呟いておりんした。」
本当に不思議でありんすね、と紅さんは首を傾げた。
私も、もげるくらいに首を傾げたいところだった。
紅さんも訳がわからないだろうが、自分もさっぱりなのだ。