蝉の声がする。どうやらゆずは、畦道で倒れていたらしい。ゆっくり起き上がると目眩がした。
「…あれ」
日が暮れて…いや、それどころかもう早朝で太陽が覗きかけているようだが、ここ数時間の記憶がない。
「のど、かわいた…」
脱水症状で倒れたのかもしれない。それにしたって両親どちらもいないのは酷いと思う。ポケットを漁り、携帯を取り出す。
「んもー、娘を置いていくなんて…」
携帯を出したとき、同時に何かが飛び出る。
「ん…なにこれ」
それはお守りだった。手作りのようで、糸が解れている。中身を出すと、『導』とだけ書かれた紙が出てきた。
「んー…なんか、気味悪いけど…捨てるのもなんかな…」
ぼんやりと紙を眺めていると、携帯が震えた。
「…はぁい、もしもし…あ、お母さん!今?山の足元のとこ…え?それじゃ分かんない?田んぼの近くだよぉ」
完