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五行怪異世巡『天狗』 その④

2人が歩き始めて間もなく、2人の背後で木の枝の踏み折られるような音が聞こえた。咄嗟に振り返ると、先ほどまで2人が休んでいた木の陰から、一人の子どもが二人の方を見ている。
「あ、休憩はもう終わったんだ?」
子どもはそう言って、ふらりと揺れて姿を消した。
「ッ!」
「っ⁉」
種枚と青葉はすぐ進行方向に振り返り、種枚はその勢いのまま右腕を振り抜いた。彼女の放った殺意の斬撃が飛んだ先、2人の前方数mには、先ほどの子どもが腕を身体の前に構え防御していた。
「ひどい……いきなり攻撃するなんて」
嘆く子どもの口調は極めて軽い。
「畜生……居るんじゃねェか」
「あれが天狗、ですか」
「だろうな。もっと赤いツラしてると思ってたよ」
「いやだなあ、そんなカッコ悪い天狗像、今どき古いよ? 今は天狗だってオシャレでいたい時代さ」
2人の会話に子ども、否、天狗が割って入る。
「勝手に話に入ってくンじゃねェ、クソ妖怪が!」
再び種枚が殺意の斬撃を飛ばすが、天狗はまたも姿を消して回避する。

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