「くそっ!」
そう吐き捨て刀を抜こうとする青葉を、種枚は片手で制止した。
「待ちな、青葉ちゃん。刀は抜くな」
「え? なんで……」
種枚はそれには答えず青葉の刀をひったくり、青葉が何か言う前に下げ緒で鞘と刀を結び付けて固定し、再び青葉に返却した。
「これで良い」
「なんでこんなこと……」
「鈍器として使うなら、少しでも重かった方が良いだろ?」
「鈍器?」
「あァ、君の『それ』の使い方は、斬撃武器よりは殴るための重量物だったからね」
「ねえ、お話終わった? 待ち飽きたんだけど」
天狗の声がどこからか聞こえてきて、二人は咄嗟に背中合わせに立ち、周囲に注意を払った。
どこかに天狗の姿が無いかと二人は目を動かすが、二人以外に動くものの姿は見られない。
変化の無い状況の中、青葉は頬から顎に伝う冷や汗を無意識に拭った。その時だった。
どこからかビシリ、という音が響き、それに続いて大木の幹が割れ、折れて倒れる大きな破壊音が響き渡ったのだ。