正確に言えば、「カナ」は写っていない。
が、「同一の個体」は写っている、
と言う状況である。
つまり、戦前に存在していた彼女はもう居ない。
それだけである。
だからどうという事はない。
カナ自身も、なかったことのように扱っている。
ただいっときを除いては。
彼女が一人で退屈でしょうがないときのみ、
思い出にふけることにしている。
エミィはそれを知ってか知らずか、
よくフラフラと出かけて行くことがある。
「おかえりなさい」
エミィの帰りの早さに少し安堵しつつ、
彼女は写真をウェストポーチに突っ込んだ。