突然、青葉・カオルの2人を中心に旋風が発生し、土煙と落葉が舞い上がった。
「畜生、付喪神風情が舐めやがって! 大妖怪への無礼、ただで済むと思」
天狗の言葉は途中で途切れた。土の旋風を突き破って放たれた〈薫風〉の突きが、左肩を貫いていたのだ。
「うるさい」
カオルは風が止んだのに合わせて蹴りを食らわせ、仰向けに転がしてからそのまま刺突で地面に縫い留めた。
「クソ、抜けよこれ! 痛いだろ」
喚こうとする天狗の顔を踏みつけ、また黙らせる。
「……あ」
「どうしたの、カオル?」
「ごめんね、ワタシの可愛い青葉。そろそろ限界。ちょっと来てくれる?」
手招きされ、青葉がカオルに近付く。すると目の前に立った青葉に倒れ込み重なるようにして、カオルの肉体が消滅した。
「⁉ 消え……⁉」
動揺する青葉の頭の中に、直接声が響く。
(ごめんねぇ、ワタシの可愛い青葉。肉体を維持しようとすると結構消耗するんだ。でも大丈夫、カラダが無くたって人外のモノにワタシの可愛い青葉を傷つけさせやしないから)
「え? あ、うん……」
状況に困惑していた青葉だったが、天狗が逃れようともがいていることに気付き、すぐに左肩の〈薫風〉を踏んで押さえた。