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五行怪異世巡『天狗』 その⑬

数分して、青葉と天狗のもとに種枚も合流してきた。
「うぁー……? おや青葉ちゃんよ、捕まえたのかい?」
「あ、はい。どうにか」
「そりゃめでてぇや。そこ、代わってくれるかい?」
「はい、どうぞ」
天狗から離れた青葉に代わり、種枚が天狗の身体の上に腰を下ろし、〈薫風〉の柄に踵を乗せた。
「そんじゃ、オイ天狗」
「な、何だよ……?」
やや怯えた表情の天狗の眼前に鋭い爪を具えた指を突き付け、種枚は顔を寄せた。
「現状、貴様の命は我々が握っているわけだが……ここは上位者らしく貴様に死なずに済む可能性を提示してやる」
「なっ、『上位者』だと……⁉」
反抗しようとした天狗の顔を片手で掴み、僅かに握力を込める。
「馬鹿め、話は最後まで聞け雑魚妖怪が」
「…………!」
「良いか? おい天狗、私たちの仲間になれ」
「ナ、ナカマ……?」
「ああ。本来なら人間相手に悪さする阿呆は容赦なくブチ転がす所存なんだが……。安心しろよ、同類なら身内にいる。悪いようにはしないさ」
「……何をすれば良い?」
既に抵抗を諦めて脱力していた天狗に問われ、種枚はニタリと笑った。
「良い子だ。人間相手に悪さする阿呆を懲らしめてくれりゃあ良い。貴様はあの子……青葉ちゃんの下につけ。貴様の生死は単に、貴様があの子の機嫌を損ねないかにかかっている。ふざけた真似はするなよ?」
天狗の額に、出血が起きる程度に爪を強く押し付け、肩の〈薫風〉を抜いた。

  • 五行怪異世巡
  • ゴイグリ第1話、無事完結
  • 速えェよ鬼子
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