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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 21.ティアマト ③

「いやぁ、ね、ウチも噂で君の存在は前々から聞いてたんだけどさ」
わざわざ彼らと一緒にいなくてもよくない?と雪葉は尋ねる。
わたしは思わずうつむく。
確かにわたしはなぜ彼らと一緒に…?
つい考え込むが、不意に屋上に強い風が吹いてわたし達の足元に白いつば広帽が飛んできたことで、その思考は中断された。
「あ、すみませーん」
透き通るような声と共に、背の高い少女がこちらに駆け寄ってくる。
わたしは思わず足元の帽子を拾い、彼女に手渡した。
少女はありがとうございます、とお礼を言って帽子を被ると、そのまま屋上の下の階に続くエレベーターの方に向かっていった。
わたし達は静かにその少女の背中を見ていたが、突然穂積がこうこぼした。
「あの子…もしかして異能力者⁇」
急な言葉にわたしはえ?と聞き返す。
「確かに、あの子からは異能力の気配がした」
でも、と雪葉は続ける。
わたしはでも?と促す。
「変な感じだった」
まるで薄れているような、と雪葉は呟いた。

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