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ただの魔女 終

“魔女”が目を覚ました時、最初に見たのは彼女を見下すヤヨイの顔だった。
「あ、おはようございまーす……この度はうちの姉上がお世話になりましたぁ」
「ぅ……誰……?」
身を起こそうとする“魔女”の眼前に、ヤヨイはメイスを突き付ける。
「悪いけど、動かないでいただいて…………。私は中山ヤヨイ。あんたが散々痛めつけてくれた中山サツキの実妹だよ」
「……へぇ?」
再び頭を下ろし、“魔女”はヤヨイと睨み合う。
「それで、妹が何の用? お姉さんの敵討ち?」
「別に……死んだわけでも無いし」
「何だ、サツキ死ななかったんだ。私が死んでなかったから、てっきりあっちが死んだものかと」
「あんた戦闘狂か何かなの? ……まあ良いや。用件はまあ、一つだけでさ」
「ふーん?」
ヤヨイの言葉を待つ“魔女”の顔面を、鎚頭が鋭く打ち据えた。顔面の骨が砕ける感触と共に、“魔女”の顔は打撃の勢いで横方向に弾かれる。
「痛……あれ? 痛くない……?」
ダメージが一切残っていないことに困惑する“魔女”の顔面を、更に正面から叩き潰す。
「ぐっ…………⁉」
メイスが持ち上がった後の“魔女”の顔にはやはり、傷の一つも無い。
「私の魔法だよ。『外傷の治癒』。流石に身内が殺されかけて黙っていられるほど私も優しくなくってさぁ。お姉ちゃんが友達だって言ってたからこのくらいで済ますけど……」
“魔女”の胸倉を掴み、引き寄せる。
「今度私の身内に手ぇ出してみろ。お前の精神がベキベキに砕けるまで殴り続けてやる」
「…………っはは。私、あんたのことも嫌いじゃないよ、中山ヤヨイ」
「……はぁ?」
「あんたの信念はきっぱりしてるから聞いてて気持ちが良いや」
ヤヨイから解放された“魔女”は、徐に立ち上がり、衣服についた埃を払った。
「そうだ。中山サツキに託ってくれる?」
「……何を」
「『富士見ヒカリ』。私の本名だよ。私だけ名前を掴んでるのは不公平だからね」
“魔女”――ヒカリはヤヨイに手を振り、屋上の落下防止柵を乗り越え、飛び降りた。
慌ててそちらに駆け寄ったヤヨイが見たのは、校舎の壁に貼り付いていた大型ゴーレムの手の中に納まったヒカリの姿だった。
「……あんのクソ魔女が」
ゴーレムに抱かれて去っていくヒカリに悪態を吐き、ヤヨイは変身を解除した。

  • 魔法少女学園都市
  • ゴーレムくん追いついてたんだね
  • 終わりやが
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