彼がむせかえるような日差しから逃げるように彼の部屋に入り込み、設定温度23度のエアコンをつけたのと同時に私は室外機にむっと顔を近づけ、溢れ出る内情を押し殺してしんと彼の香を鼻腔に閉じ込めます。
彼の毛穴は熱され、開き切っています。それが冷やされ、絆され、逆らうことできずに収縮する瞬間、彼は無意識の中に汗ばむ気体を発生させました。それは今私の気道を通り、そして血管に溶け込んでいます。そしてひしめき、歓喜する臓器を横目に、また逆らうこともできず私の鼻から吐き出されるのでしょう。そのことを脳裏にしがみつかせた私はきっとこれからもあなたの顔をした北極星瞬く茨の道を歩くのでしょう。その先に誰がいるやもしれぬ道をただ一人で歩くのでしょう。