近づいてよく見ると、鞄を背負ったまま頭から突っ込んでいた。
カナは、恐らく20代そこそこだと思われるこの男性に声をかけた。
「もしもーし」
『......』
「いきてますかー?」
『......』
返事は愚か反応すらない。
軽く肩を揺さぶると、ゴロリと首が落ちた。
「あー、あの、たいへんもうしわけないのですが、」
『.......』
「あなたのかばんについているラジオをいただいてもよろしいでしょうか?」
『.....』
「わたしのものは3日まえに壊れてしまったので」
『.......』
理由もしっかりと伝える。
エミィは悪趣味だと言ってあまり好まないが。
「ありがとうございます、ではありがたくつかわせていただきます。」
『.......』
「それではおげんきで。」
『......』
今まで一言も発しなかった、
ーと言うか発せる訳が無いのだが...ー
死体の青年に背を向け、カナはスキップでテントへ
戻っていった。