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皇帝の目 1

「チトニア…?」
梓がそう声をかけると、驚いたような息遣いが聞こえた。柔らかな風か病室に吹き込む。
「うん、ごめんね声かけずに入っちゃって。寝てたらどうしようと思ってさ」
梓は現在入院中である。ビーストの騒動に巻き込まれ怪我をし、更に目が弱視になってしまい、入院生活を余儀なくされたのだ。チトニアは、病院で出会った友人である。
「気にすんな、会いたかったと思ってたとこだし。隣座って」
「うん!」
チトニアを、梓は大変気に入っていた。他人には無愛想な梓であるが、チトニア相手には好意的に接している。
「ねえねえ、私と契約する気ない?」
「なんで?」
「ん〜…友達だからさ!私ね、梓のこと守りたいの!人間て寿命短いし、一瞬でも長く一緒にいたいから」
「でも私契約しても戦えないぞ。貧弱だしまだ弱視に慣れてない」
「私が目に『なって』あげるから大丈夫!」
チトニアの温かい手が梓の手を握った。

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  • Tithonia diversifolia
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