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Flowering Dolly:猛獣狩りに行こう その②

朝7時過ぎ、役場に出勤してきた若い男性職員がふと見上げると、見慣れたドーリィが2階の対ビースト対策課に当たる窓に貼り付いてじっとしているのが目に入った。
「………………おーい」
男性に声を掛けられ、ハルパは首だけを回して顔を見下ろした。男性が役場の鍵を掲げ持っていることに気付き、即座に地面に飛び降りる。衝撃を殺すために大きく身体を曲げた姿勢のまま、男性を黙って見上げると、男性は溜め息を吐いて正面玄関を開錠し、中に入っていった。ハルパもその後に続き、2階の『対ビースト対策課』と書かれた扉の前に座り込み、先刻パン屋の女性にもらった堅パンを眺め始めた。
30分ほどして、ハルパの前に1人の少女が現れた。そちらに片目だけを回して姿を確認すると、少女は肩を跳ねさせて数歩後退し、扉に後頭部を打ち付けた。
「び、びっくりした……ハルパちゃん何してるの?」
ハルパは首を傾げ、手の中のパンを高々と掲げてみせた。
「……え、パン? なんで? 食べないの?」
「…………」
ニタリと笑うハルパに困惑しながらも、少女は短距離転移で扉の内側に入り、内側から鍵を開けた。
「と、取り敢えずハルパちゃんも入ったら?」
ハルパは緩慢な動作で立ち上がり、1歩大股に室内に進み入った。
部屋の隅に立てかけられていた折り畳み椅子を開き、その上に膝を抱えて座るハルパに、少女は恐る恐る声を掛ける。
「ハルパちゃん?」
「……?」
ハルパは牙を剥き出しにした笑顔を少女に向けて首を傾げる。
「いやこわぁ……は、ハルパちゃん、パンが何なのかは知ってるんだよね?」
少女の言葉にハルパは持っていた今まさに眺めていたパンを見つめ直し、こきん、と首を鳴らし、徐にそれを2つに千切って片方を少女に差し出した。

  • Flowering Dolly
  • 意外と愛されてるハルパちゃん
  • 人間っぽさが本当に乏しいハルパちゃん
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