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Flowering Dolly:猛獣狩りに行こう その③

「えっいや別にいらな……いや、まあ、うん……ありがと……」
少女はしばしの逡巡の末にハルパの差し出したパンを受け取り、ちまちまと齧り始めた。
『うわすっごい頑丈な歯ごたえ……そういえば聞いてよハルパちゃん』
不意に少女から発信された念話に、ハルパは顔を彼女の方に向けて反応する。
『うちのマスターがだらしなくってさぁ。今朝だって全然起きなくって、大体あれは昨日マスターが……』
少女の愚痴をニタニタとしながら聞いていると、入り口扉が開いた。そこに立っていたのは少女の“マスター”である20代後半ほどの男性だった。ハルパは立ち上がって彼に接近し、パンの片割れをやや萎縮しているその男性の手に置き、再び折り畳み椅子の上に戻って少女に視線を送った。
『……え、何。嫌だよマスターがいる前で話す内容じゃないじゃんさすがに……』
少女の念話にハルパは首を傾げ、壁掛け時計を注視し始めた。しばらくするうちに、室内にはドーリィやそのマスター、対策課職員などが増えていき、やがて9時の時報が鳴り響いた。
ハルパは椅子から飛び降り、責任者のデスク前までにじり寄った。
「うおっ……ハルパか」
そこに掛けていた痩せ型の中年男性は、普段通りの不気味な笑みを口元に浮かべたハルパにたじろぎながらも、冷静にクリップボードを差し出した。そこに挟まれた資料を1枚ずつ確認し、やがてハルパは1枚を取り出して男性に見せた。
「ああ、そこか。その辺りは人口も多いからな。ビーストの出現事例も多いし、頼むぞ」
ハルパは口角を更に歪に吊り上げ、軽く頷いて窓から外に飛び出した。

  • Flowering Dolly
  • 何て?
  • チェシャ猫みてーな笑い方しやがって
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