「ホントなんなんだよアイツ…」
日が暮れそうで暮れない時間帯、とある大学の校舎の廊下を黒髪にゴスファッションのコドモ…ナツィがぶつぶつ呟きながら歩いている。
レンガ造りの校舎の、いわゆる“研究室”が並ぶ薄暗い廊下にはナツィ以外に人気がほとんどなかった。
「俺があの人のことを心配してるみたいなこと言いやがって」
別にどーでもいいっつーの、とナツィは口を尖らせる。
そしてナツィはある部屋の前で足を止め、扉に手をかけようとした。
「…?」
何かを察したのか、ナツィはぴたと動きを止める。
閉まっている扉の向こうからは何か物音とかすかな話し声が聞こえてきた。
「人間…じゃない」
何やら部屋の中を調べているような物音に、ナツィは思わず呟く。
すると不意に室内の音は止んだ。
ナツィは暫くの間、ここからどうするか考え込んだ。
室内から魔力の気配がする辺り、中にいるのはただの人間ではないようだ。
ナツィの保護者のような魔術師ということも考えたが、ナツィの言葉に反応して動きを止める辺り見知った者ではないのかもしれない。