固く抱き合っていた腕を放して立ち上がったササとサヤを、1人の女性が見下ろす。和風の装束に身を包んだ長身の彼女には左腕が無く、残った右手には彼女の背丈よりいくらか短い程度の短槍を持っている。
「ヒロさん!」
「ヒロさん!」
「ヒロさんありがと!」
「ありがとヒロさん!」
ササとサヤに交互に言われ、ヒロと呼ばれた女性は苦笑した。
「発音としては『フィロ』、なんだがねぇ……まあ良いや。状況はどうだい?」
ヒロ、もといフィロに尋ねられ、2人は顔を見合わせてから揃ってサムズアップを示してみせた。
「パンチ1発いれた!」
自慢げに言うササの頭を撫でてから、フィロは短槍を肩に担いだ。
「そいつは立派だ。せっかくちびっ子たちが頑張ってくれているわけだし、私も張り切ってこようかねぇ」
短距離転移によって、フィロはビーストの後方約10m地点にまで移動した。
ビーストもすぐに気付き、戦闘態勢の構えを取る。
「やぁ、化け物。相見互いに左腕欠損。尾と槍でジャンルこそ違えど、奇しくも得物も長物どうしでお揃いだ。ミラーマッチと行こうじゃないか」
ビーストが超高速で突進し、右の拳を心臓部目掛けて突き出した。