夜、日が暮れた後。
小さな喫茶店の2階の物置で、エプロン姿のコドモ…かすみがせっせと箒で掃き掃除をしている。
その傍では相変わらず金髪にツノの生えたコドモ、キヲンが椅子に座って白いウサギのぬいぐるみを抱えていた。
「…ナツィ、うさちゃん迎えにこないね」
不意にキヲンが呟いたので、かすみは掃除の手を止め顔を上げる。
「昼間に飛び出していっちゃった時に置いてっちゃってたけど、お迎えに来ないのは変だよね」
ね?とキヲンが尋ねると、かすみは確かにと頷く。
「普段だったら回収しにくるのに…」
なんでだろ、とかすみは首を傾げる。
「なんでだろうねぇ」
キヲンはぬいぐるみに目を落とした。
「今日のボクは寧依が迎えに来るのが遅いからいいけど、そうじゃなかったらうさちゃんはかすみの家で寂し…」
キヲンがそう言いかけた時、ガチャと物置の扉が開いた。
「?」
2人が扉の方を見ると、そこには喫茶店の主人である老人が立っていた。
「かすみ、ちょっといいかね」
主人が急に尋ねるので、かすみはあ、はいと答える。