「昼間、“黒い蝶”…ナハツェーラーはここに来ていたよな?」
「ええ、そうですけど…」
ナツィがどうかしたんですか?とかすみが聞くと、いやぁ…と主人は困ったように頭を掻いた。
「さっき保護者の方から連絡があってな」
3時くらいにあの人の所を飛び出していったっきり、戻ってきてないみたいなんだ…と主人は不安げに言った。
かすみとキヲンはえ、と驚く。
「戻ってこないのはいつものことなんじゃ」
かすみがそう言うと主人はいいやと横に首を振る。
「あの人の研究室に侵入した“人工精霊”を追いかけて飛び出していったみたいでな」
もしかしたら面倒なことに巻き込まれてるんじゃないかって、あの人が心配していると主人は続ける。
「…別に、ここには昼頃に来ただけだよな?」
主人の言葉にかすみはええと頷く。
「じゃあ研究室に入り込んだ子たちを追いかけて…」
主人がそう言いつつ顎に手をやった時、ふとかすみが俯いているのに気付いた。
「かすみ?」
主人にそう呼ばれてパッとかすみは顔を上げる。