だがゼフィランサスが走りながら自身の周囲に緑の短槍をいくつも生成して、ビーストに向かって放つ。槍はビーストの頭部に次々と突き刺さり、ビーストは思わず悲鳴を上げて体勢を崩した。
「よし、このまま…」
ゼフィランサスはそう呟いて右手に槍を生成するが、ビーストは突然口から赤い火球を吐いた。
「⁈」
ゼフィランサスは驚きのあまり動けなくなってしまう。しかしそこへ赤髪をツインテールにした少女が両手に赤い刀を携えて飛び込む。
そして彼女は刀で火球を切り捨てた。
「リコリス‼︎」
ゼフィランサスが思わず名前を呼ぶと、リコリスは貴女、と振り向く。
「ビーストを前にして動けなくなるなんて全然ダメじゃない」
もっと攻めていかないと、とリコリスはゼフィランサスに詰め寄る。ゼフィランサスはご、ごめん…と申し訳なさそうにした。
「ま、いいですわ」
ここからはアテクシに任せなさいとリコリスは後ろを見る。しかしビーストは既にそこにいなかった。
「あ、あれ⁇」
ビーストは…?とリコリスは思わずポカンとする。ゼフィランサスも慌てて周囲を見回す。周りには人気のなくなった街が広がっており、先程まで光壁を張っていたアガパンサスの姿も見えない。
『リコリス、ゼフィランサス‼︎』
するとここで2人の頭の中に響くように声が聞こえた。アガパンサスからのテレパシーだ。
「どうしましたのアガパンサス」
『さっきビーストが移動し始めたから追いかけてるんだけど、あのビースト、避難所の小学校の方向に向かってるみたい!』
「なんですって‼︎」
リコリスは思わず声を上げる。
「避難所って…あの少年と戦う気のないドーリィが逃げている所じゃない!」
『ええそうなの』
アガパンサスは落ち着いた口調で答える。
『だから…私があのビーストを足止めするから、リコリスとゼフィランサスは急いで来て!』
「分かったわ」
リコリスはそう答えるとゼフィランサスの顔を見る。ゼフィランサスが静かに頷くと、2人の姿が一瞬にしてその場から消えた。