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五行怪異世巡『きさらぎ駅』 その⑩

光はすぐに止み、反射的に閉じていた目を開くと、そこは最初にいた駅のホームの上だった。
電車はおよそ90分の遅れの末、今まさに到着したところで、青葉と白神の目の前で乗降口の扉が開いた。
遅延の影響か殆ど満員状態だったその車両を一度見送り、空いたベンチに並んで腰掛ける。
「……脱出成功ってことで良いのかな?」
「そう……なんじゃないですかね。どうなの、カオル?」
(大丈夫、もう脅威は無いよ。……その妖怪以外)
青葉の脳内に響く声で、カオルが答えた。
「大丈夫みたいです」
「それは良かった。めでたしめでたしだね」
「そうですね」
2人がほぼ同時に、電光掲示板の表示に目をやる。次の電車の到着は7分後と出ている。
「結構あるなぁ。さっきの電車に無理してでも乗っておいた方が良かったかな?」
「嫌ですよ、満員電車とか。……どうせ次も似たような感じなんだろうけど」
「じゃあ次もスルーする?」
「……それはそれで面倒ですね。もう良いや、次で帰りましょう」
「そうだね」
その後、定刻通りに来た先ほどのものとほぼ変わらない混み具合の電車に、2人は身体を滑り込ませた。

  • 五行怪異世巡
  • メデタシメデタシ
  • この2人、想定外に息が合うな……?
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