翌朝、青葉が目覚めて居間にやって来ると、長女と平坂が話し合っていた。
「あれ、潜龍さん。あ、姉さまおはようございます」
「あらおはよう青葉ちゃん」
姉に頭を下げ、青葉は平坂に近付いて行った。
「やっぱり頼るんですね」
「ああ、人手は多かった方が良い」
「正しい判断だと思いますよ」
親しげに話す二人に、青葉の姉は首を傾げた。
「青葉ちゃん、いつの間に仲良くなったの?」
「まあ、少し縁がありまして。姉さま、頑張ってくださいね」
「ええ」
青葉は居間を後にして、母屋から出た。
(ねえ、ワタシの可愛い青葉?)
「……なに、カオル?」
青葉に憑依した愛刀の半身が、脳内に直接響く声をかける。
(『力』、欲しくない?)
「……力?」
(そう。今この街に現れている何かに立ち向かうための力)
「……”潜龍神社”が動いてて、姉さまも出るのに、無力な私なんかいらないでしょ」
(ねえ、ワタシの可愛い青葉? ワタシは『欲しいか』って訊いたんだよ。『必要か』じゃなく、ね)
どこへ行くでも無く庭を歩いていた青葉は、カオルの言葉に足を止めた。
(客観的な要不要じゃなく、ワタシの可愛い青葉の素直で正直な願望を聞きたいな)
「…………どうすれば手に入るの?」
(そう来なくっちゃ。この家には大きな土蔵があったよね? そこに行って)