「正座」
奴に言う。
「はい」
ちょうどブロック・ミールを食い終わった奴は素直に従い、床に座った。
「なんでここにいる?」
「ついて来ました」
「なんで?」
「お兄さんの住んでるところが気になって……」
「何故入ってきた?」
「開いてたので」
うっかり手が出た。奴の脳天に振り下ろした拳を振って痛みが引くのを待つ。奴に目を向けると、殴られた頭を押さえながらもにたにたと気味の悪い笑みを浮かべていた。
「ぅえへへ……お兄さんにいただいたこの痛み、一生大事にします」
「うっわ鳥肌立ったわ」
「良かったじゃないですか。今年の夏は暑いですもんね」
「気色悪いっつってんだよ馬鹿ブッ殺すぞ」
「どうぞ」
「は?」
奴は両手を広げてこちらを真っ直ぐ見つめ返している。
「首を斬るなり心臓を抉るなり、どうかあなたの望むように。さぁ、どうぞ?」
眼に一切の躊躇が無い、っつーか狂気が見える。
「ごめんなさい言い過ぎました」
殆ど反射的に土下座していた。
「……あれ?」
決めた。2度とこいつに殺すだとかそういう暴言は吐かないようにしよう。