俺も嫁も揃って船室でひと眠りし,暫くしてデッキに出て水平線を見ていると件の松山の先輩も交際相手である俺の元カノを伴ってデッキに出てきた。
すると,嫁と元カノが2人で会話を始める。「少し良いかしら?私,本当は今の貴女の夫と結婚する筈だったの…彼は本当に優しくて,私がデートで行きたい遊園地を挙げたらその場所でのイベントの時間とか全部調べてくれて,本当に好きだったの。でも,私の誕生日に遊園地デートした次の日に突然別れを切り出されて、連絡先ブロックされちゃって…でも,原因が分からなかったから彼と復縁したかったけど,もう彼は彼で幸せそうだから無理ね」と元カノが切り出すと、「彼は日本にも韓国にもルーツを持っていて、しかも気の毒なことに6歳の時から日韓関係が改善されるまでイジメや差別と10年近く向き合ったから、誰かの軽はずみな言動で傷付く人の気持ちが分かるの。だから,彼は貴女を傷つけないように大切にしてたのだと思うわ。ただ,本人から直接聴いたけど本当はデートで遊園地なんか行きたくなかったらしいわ」と嫁も返す。
「私の国ではマイナーで知らなかったけど,今の彼氏に教えてもらった野球なら元カレと復縁できるかもと思ったら…実際に野球したり試合を観てた時のあの人の笑顔、私と付き合ってた頃よりも幸せそうで…私が一方的に好みを押し付けてたと知って…」と元カノは涙を堪えながら答え、嫁は「彼が貴女も含めて元カノと付き合っていた頃が最悪のトラウマになってたって知ってた?」と投げかける。「いいえ,でも私達が一方的に彼に好みを押し付けてたからそう思われても仕方ないわね」と元カノが言うと「そうじゃないの」と嫁が反論し、「彼にとってトラウマだった理由,それは貴女達とデートで行っていた遊園地はかつて彼をイジメて何度も自殺を試みるまで追い詰めた連中が休日に集まって遊んでた場所で彼にとってつらく悲しい過去の象徴だったし、日韓両方で盛んな野球は今も彼の心の支えだけど彼が好きなチームはデートの日の試合で必ず負けて帰宅後1人で泣いてたのに、当時の彼女は野球を知らないから自分の気持ちを理解してくれなくて,極めつけにはその人の誕生日の試合で負けて決勝ラウンドに行けずに帰りの電車で泣いてたのに隣に座ってた彼女は笑顔で心が折れたって本人が言ってたわ」と嫁も涙を堪えながら続ける。