『…いっ…てぇ』
『だいじょぶ?』
林檎が心配して琥珀から降りて辺りをしきりに歩きまわった。
『こら、俺は大丈夫だからあんまり離れるな』
琥珀は跳ね回る林檎を無事回収、そっと自分の腹の下に匿った。下を見ると花が咲きほこっている。背中が痛いは痛いが怪我しなかったのはこの花のお陰だったらしい。
『林檎は怪我ないか?』
『うん』
上を見上げると空が広がるのみ。横をくるくる見回すと、ここは廊下らしいことが分かった。
『だれもいない』
『そうだな…自分で歩くか?』
『はこんで』
『はいはい…』
林檎の首根っこを甘噛みして廊下を進む。非常に広い廊下で、とても暗く、静かだった。
「……そこに誰かいるの?」
通り過ぎた一室から人間の言葉が聞こえてきた。琥珀、林檎の二匹とも毛を逆立てて警戒する。