とある夜20時頃、平坂が私室としている和室の入り口の襖が叩かれた。
「誰だ」
「兄者ー、妹だけどー」
その返答に、襖をじっと見つめていると、30㎝ほど開いた隙間から彼の妹が顔を覗かせてきた。
「何だ今の呼び方」
「いや、いつも呼んでるのよりしっくり来る呼び方があるんじゃないかと思って。……お兄ちゃん?」
「やめろ気味が悪い!」
「はいはいあに様」
「お前なぁ……」
「せーちゃんにーに。これで良い?」
「流石にふざけただろ」
「うんさすがにこれは無理……」
「……それで、何の用で来たんだ」
平坂の問いかけに、妹は思い出したように手を打った。
「あ、そうだった。兄さん、何か外に人外が集まってるっぽいんだけど」
「それを早く言え!」
平坂は素早く身支度を整え、部屋を飛び出した。