「どうした、あんた『伝説』なんだろ? この程度で倒れてくれるなよ、ナハツェーラーさん!」
「倒れるかよ、この程度で……!」
ナツィが距離を詰める。それに合わせて、少女は刀を振り下ろした。
「っ……⁉」
ナツィはその攻撃を大鎌の柄で受け止めたが、少女の動作に違和感を覚え、素早く観察する。振り下ろした姿勢のまま、微動だにしない。
(…………この現象……もしかして、あのネリネって奴に散々やられた……?)
「それな……らっ!」
ナツィの放った蹴りは、少女が回避動作を取る間も無く命中し、数mも後退させる。
「『それ』、そっち側もなるんだ?」
「げッ……ほ、ぇほっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……痛ってェー……!」
少女は体勢を整え、上段の構えでその場に制止する。
「来なよ、ナハツェーラーさん。迎え撃ってやる」
「……そんなら、お望み通り!」
ナツィが駆け出す直前、少女は既に動き出していた。刀1本にて、遠距離に届く刺突の技。しかし、その動きはまたも空中で不自然に停止した。その隙を逃さず、ナツィは大鎌の斬撃を命中させる。ダメージによって少女はよろめき、更に後退する。
「ごッ……ふぅっ、はぁっ、っ、ぐぅぅぅ……完璧な騙し討ちだと思ったのにぃ……」
肩から胸にかけて深く残る傷を撫で、掌にべったりと付着した血糊を眺めながら、少女は溢す。
「……まあ良いや」
そう呟き、少女は再び刀を構える。
「どうせ私はこれ以外の戦い方知らないし」