浜辺の散策を終わらせて港に帰ると俺の秘書で韓国支部長代理から緊急事態を告げるメールが届いた。
本来俺達が乗ってきた船は中国の港にも入港する予定だが、国際情勢の変化により中国の市民権を持たない全員の入国許可が取り消されてしまったのだ。
仕方ないので船に戻ると兄貴をはじめ地位が最も高い台湾勤務の人にも既に現状が共有されており,今済州島にいる韓国勤務の職員を緊急招集してソウルも含めた本土の全支社と連携を取りなんとか済州島内でリゾート激戦区の中文地区にあるホテルから100人分の部屋は確保できた。
しかし,本船にはアジアにある全てのオフィスから代表団が来ているのでクルーを除いても5千人は軽く超えるし彼らに一定以上のランクの宿を手配しなくてはならず全く足りない。
韓国本土も対象にしてもまだ全員分は手配できず、結局兄貴の鶴の一声で済州空港発の国際線でまだ搭乗が間に合う行き先の人を全員帰国させることになり,船は有事の際の受け入れ先として指定された港で最も近いウラジオストクに回航し、俺と嫁は関空行きの便で帰国することになった。
そうして,最低限の荷物とパスポートだけ持った俺たちを乗せたバスは溶岩が見える高速道路を一路,空港のある北岸の新都市目指して駆け抜ける。