「…はぁ」
自宅の玄関の扉を閉めた寧依は思わずため息をつく。
「まさかこんなことになるなんて」
ポツリと彼女は呟くと、マンションの廊下を静かに歩き出した。
「わたしは術式を組んだだけなのに」
どうしてこう…と寧依が言いかけた時、不意にマンションの通路の柵の方からご機嫌よう、と声をかけられた。
思わず彼女がそちらの方を見ると、白いノースリーブワンピースを着た青い長髪のコドモが通路の柵に腰かけていた。
「…あなたは」
「元気そうね、万 寧依(よろず ねい)」
青髪のコドモはふふふと微笑む。
「この間渡した魔石と“説明書”はどうだったかしら?」
「どうもこうも、面倒なことになってるんだけど」
どうしてくれんのよと寧依は腰に両手を当てる。
あら、術式を起動させたの?と青髪のコドモは口に手を当てた。