(…………さっ、てっ、とぉ……)
目の前の覚妖怪を睨みつつ、鎌鼬は思案していた。
(困ったな……俺の力、それ自体は攻撃力0だからな……出てきたは良いけど、師匠が来るまでもつか……?)
『……ほう?』
覚妖怪の口角がにたり、と吊り上がる。
『貴様、殺傷能力は持たんのか。ならば恐るるに足りんな』
「げっバレた。けど、お前転がすだけなら俺でも出来るんだぜ」
『面白い。その程度でワシをどうこうできるというなら、試してみるが良い』
「……りょーかい」
鎌鼬はクラウチングスタートの姿勢を取り、身体を風に変え、覚妖怪に向けて飛んでいった。
覚妖怪が跳躍した直後、その背後の木の幹に鎌鼬が姿を現わし、一瞬遅れて地面に降りる。
「クッソ、躱された……!」
『……ククク……貴様、どうやらその異能、そう何度も使えるものではないようだな。そして……「自分の方が速度は上だろうに、何故当たらない」、そう考えているな? 無駄だ。貴様ら“考える人間”では、ワシを捉えられんよ』
鎌鼬は額から頬を伝い顎に流れる汗を手の甲で拭い、ニタリと口角を吊り上げる。
「はぁ? どういう意味だよ、技術かトリックか? スペックで俺が勝ってるのは事実なんだ。お前、俺に謎を解かれた瞬間食われるぜ?」
『無駄無駄。解けたところで、解決法なぞ無いのだからな』
「やってみなくちゃ、分からねぇだろ!」
再び風に変じ、鎌鼬は覚妖怪に迫った。しかし、その攻撃もまた回避される。二度、三度と攻撃を仕掛け、その悉くが回避されて終わる。
「クッソ……何が足りねぇんだ……? …………けど」
『「これで挟み撃ちの形になった」か?』
覚妖怪がニタリと笑う。その背後から、白神が電撃を纏った爪を振り下ろした。覚妖怪はそれを軽く身を逸らして回避する。
『悪いが、ワシの脳は貴様1人に使い切るほど狭量ではないぞ』