いくら自然が好きだといっても、鬱蒼としたジャングルのなかに身を置きたいという人はそうはいない。現代人が最も好むのは、人間のコントロール下にある自然である。つまり、人工的な自然。
人は廃墟にひかれる。自然にはかなわないということを実感させられるのと同時に、自然に取り込まれたいという気持ちが湧き上がることで現実をいっとき忘れられるからだ。
と、枕元のメモ帳に書いてあったのだが、何度読み返しても意味がさっぱりわからない。あきらめてスーツに着替え、リュックしょって部屋から出た。
そういえばもう正月休みに入っていたのだったと、バスターミナルで気づいた。
部屋に戻ってもしょうがないので適当なバスに乗った。すると、元カノがいた。隣に座れとジェスチャーで元カノがうながす。素直にしたがう。バスが走り出す。乗客は僕たちだけだった。久しぶりに会った元カノは、さらに美しくなっていた。「どこ行くの?」
「運転手にきいてくれ。君はどこに行くんだい?」
「運転手さんにきいてみて」