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僕の好きな先生

 鶏が先か卵が先かは、進化の視点で見ればすぐにこたえの出る問題である。  
 鳥類は爬虫類から進化している。  
 爬虫類は成体の段階でいきなり変異したのだろうか。  
 否である。
 突然変異説を支持しようがエピジェネティック説を支持しようが結果は同じ。変異したのは生殖細胞内の段階でだ。  
 鶏に進化する前の祖先の鳥でも、それはもちろん変わらない。  
 ということはつまり。
 卵が先である。
 こんな小学校六年生でもちょっと考えればわかるようなことをいつまでも論争しているというのは、おそらく結論を出したくないからだ。  
 なぜか。
 永遠におしゃべりしていたいから。  
 きっとそいつらは口から先に生まれてきたのだろう。  
 おしゃべりの度合いの高さに比例して女性性は高くなる。
 女性的な協調性、男性的な探究心が文明の発達につながり、人類は繁栄してきた。つまり女性性の高い男性ほど進化しているといえるし、また、男性性の高い女性ほど進化しているといえる。  
 だがしかし、けっこうなことじゃないかと手放しで喜べないのは、逆に文明が発達しすぎて栄養過多となり、男性ホルモン、女性ホルモンの分泌過剰なハイパーが増えているように感じられるからである。豊かさが三代続かなければ脳は発達しないと最近よくきくが、発達しすぎなのだ。男性的な寛大さもなく、女性的な穏やかさもない、ヒステリックで自己愛の強い、頭でっかちで統合失調症ぎみの自分病の未来人が牽引する世界。終わってる。  
 といった内容のことを得意になって担任のクリスチャンの生物の先生に話したら、わたしは進化論は信じない、というセリフとほぼ同時に胸ぐらをつかまれ、顔面に拳を叩き込まれた。  
 先生は拳から生まれてきたんだな、と鼻血をたらしながら思いましたとさ。

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