不意に琥珀の下半身を押さえつけているダクトの鉄壁が消えた。思い切り後ろ足で蹴ると、肉球に毛のようなものが触れる。
『うおおお!?くすぐったい!!』
『ぴぃ!やっぱりなんかきてる!!』
林檎は悲鳴をあげて琥珀の耳を引っ張る。
『お前は!先に行け!』
琥珀は林檎を小突いて先に行かせ、自分も慌てて思い切り床を蹴った。林檎は琥珀の前を懸命に走る。琥珀が広くなったダクト内で首を回すと、後ろで口を開けている巨大な蜘蛛が見えた。
_ああ、なるほどな…。
その蜘蛛がダクトの中に入ろうと脚でこじ開けるため、琥珀も動きやすくなったのだ。
『こはく!そとみえた!』
琥珀が顔を進行方向に戻すと、林檎の身体が消えている。
『林檎…』
前足が空を切る。