琅に手を引かれてキヲンが歩き続け約20分。
いつの間にかキヲンは海沿いの倉庫街のような所に来ていた。
「ねぇ、ここどこ…?」
見知らぬ怪しげな場所に入り込んでしまったキヲンは不安げに呟く。
対して琅は別に怖い所じゃないってと笑顔を見せる。
「…それにしても硫、お前今まで何してたんだ?」
日が暮れ始めて薄暗くなってきた倉庫街を歩きながら、琅はふとキヲンに尋ねる。
ボクはキヲンなんだけどなぁとキヲンが答えると、そんなことはいいからと琅が続ける。
「どこかの魔術師の元で暮らしてたのか?」
琅の言葉に、魔術師っていうか…とキヲンは頭を掻く。
「魔術師“見習い”みたいな人の所で暮らしてたって言うのかな」
キヲンは続ける。
「ボクにもよく分かんないんだけど、ある人工精霊の手でボクはあの人の元に来たんだよね」
それで“ボクはボクになった”の、とキヲンは笑った。
琅はよく分かんね、と笑う。
「…そういうキミは何者なの?」
ボクのこと知ってるみたいだけど、とキヲンは琅に聞く。
琅は、そりゃお前の“家族”だよと返す。