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Modern ARTists:威霊遣彩能媛 その⑪

カミラの爪がヒトエの心臓を捉え、その表面をなぞる。
「ヒトエ、どきどきしてるね?」
「……そりゃ、生きてるもの」
ヒトエの答えに満足げに頷き、カミラは掌に湛えたヒトエの吐血を自身の頬に塗り付けた。
「みて? ヒトエとおそろい」
(見てる余裕なんて無いよ……! うぅ、背中が痛い……!)
互いに貫いた傷を抉り合い、止め処ない出血が2人の周囲に赤黒い水溜りを形成する。
継続的なダメージに、ヒトエの顔色は青褪めていき、衰弱から呼吸が荒くなっていく。
「……ヒトエ? もうだめ?」
「っ……カミラこそ。手が止まってるよ?」
「えへへ、ばれちゃった」
カミラの体重が、だんだんとヒトエの身体に預けられていく。
「ヒトエぇ……」
「……何? カミラ」
「ヒトエは、たのしかった?」
「…………うん。カミラは?」
「とってもたのしかった!」
「……そっか」
カミラの身体は完全に脱力しきり、また、ヒトエもほぼ力尽きていたことで、2人は互いを支え合うように抱き合っていた。
「…………ありがと、ヒトエ」
「カミラ……?」
ヒトエの問いかけに、カミラは答えない。ヒトエが覗き込むと、カミラは安らかな微笑を浮かべたまま目を閉じていた。

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