「その子は1度“学会”の手にかかり死んだ身よ」
碧の言葉に琅は…は?と首を傾げる。
「確かに硫と同じ姿形をしていて、魔力の気配も同じだわ」
でも、と碧は続ける。
「硫は“学会”によって倒され、その核だった術式の刻まれた魔石は“学会”に回収された」
そして“学会”側の人間の手に渡り、使い魔として“再生”させられたようなのと碧は呟く。
「わたしたち使い魔は核である術式が無事なら、魔力供給が途切れて使い魔じゃなくなっても、再度魔力を通すことで復活させることができるの」
だけど魔力供給が切れるとその使い魔の記憶は消失する、と碧は自身の胸に手を当てる。
「使い魔は蘇る前と蘇ったあとでは別の個体になるの」
だから、と碧は絞り出すように言った。
「その子は、硫なんかじゃない!」
琅は目を見開く。
「…は?」
それ、どういうことだよと琅は呟く。
「おれ、そんな話一度も聞いたこと…」
「マスターが言ってたの」
琅が言い終える前に碧は答える。