_シオン転入から1週間。シオンは個性的なお嬢様に気に入られたアスリート体格の人として若干名を馳せつつあった。
「シオンさん!」
「うわーーーーっ!!!!」
エリザベスに耳元で大声を出され、シオンは柄にもなく叫んでしまう。
「まあ、お元気なようで何よりですわ!おはようございます」
「お…おはよう…リサちゃん」
のんびりとしているシオンとは対照的に、エリザベスはてきぱきと靴を履き替え、シオンの腕をぐいぐい引っ張り始めた。
「ほらほら!早く行きましょう!」
「わわ、待って〜」
「ああそうですわ、こっちを通ると近道になりますの。でも壁にひびが入っていますから、先生方に見つかると怒られてしまいますわ。この時間なら誰も通りません、行きましょう」
「う、うん」
エリザベスは申し訳程度に立ち入りを禁じているカラーコーンを跨いで階段を登る。シオンもそれにならい、ついていく。
「_ん?」
違和感。踊り場の鏡にはひびが入っていた。ひびからは僅かにだが水が染み出している。しかし、それだけだ。シオンは無視して通り過ぎた。