ロノミアはふらつきながらも“癖馬”を持ち上げた。
「何を下らないことを……」
ササキアはロノミアの提案には載らず、突進を仕掛けた。
「うおっ! 危ねーだろー!」
ロノミアは刀を振った勢いで意図的に姿勢を崩すことで、攻撃を回避した。更に慣性のままに刀を振り回し、ササキアに向けて振るう。緩慢なその動作を、ササキアは容易に回避し、反撃に盾の側面を叩きつけようとした。ロノミアはそこに回転運動で戻ってきた刀身を合わせ、ぶつかり合ったその点を軸に、『自身の肉体』を遠心力によって大きく移動させる。空中に投げ出されたロノミアの身体は、回転運動しながら着地し、回転の『軸』を再び彼女の体幹へと移動させ、更に回転運動を加速させる。
「それで、生徒会長さんよぉ? 『暴走する力』は強さだと思うかい?」
「何?」
遠心力の乗った“癖馬”が、再び盾に衝突する。
(重い……が、この程度なら問題ない)
ロノミアは再び回転軸をずらしながら、空中に跳び上がる。
(よし、まだ『回転』は生きてる! このまま……!)
落下の勢いを乗せて、“癖馬”を叩きつける。それを受け止めたササキアの盾に、亀裂が入る。
(割れた……⁉)
「もう一度問うぜぃ、生徒会長! お前を今追い詰めているこの『制御できない力』は、強さか?」
「……制御し、扱うことのできないそれを、『強さ』とは呼ばない」
飛び退くように回避しながら、ササキアは答えた。
「へぇ……?」
ロノミアは地面を“癖馬”で打った反動で再び跳び上がり、追撃を仕掛ける。ササキアはその様子を注意深く観察し、ロノミアが自身の背後に着地した瞬間を狙って後ろ回し蹴りを放った。