「其れはまるで熱異常であった。 真夏の蜃気楼に、頭から呑まれた様な衝撃であった、と記憶している。 或れ程鮮烈に焼き付ける閃光に、私は、未だかつて出逢った事がない。 其れは熱を持ち乍ら、冷たく人の頬を撫でて散る。 その可笑しな寒暖差で、人は風邪を引かされるのかも知れない。 全く、迷惑な話である。 其の閃光を目にすると、誰も彼も妙に感傷的になっていけない。 仕事も捗らぬと言うものである。 しかし、其の閃光の熱故か、はたまた冷たさ故か、この季節の眠りは覚め難い。」