あ、もう駄目だ、終わったーーー。
そう思って強く目をつぶる。
1秒、 2秒、 3秒。
何も起こらない。
そうっと目を開けると、そこには。
「お客様、車内での乱闘、及びそれに準ずる行為はお控えください。」
黒髪の少女が立って居た。
少女は僕の首根っこを掴んでおり、どうやらナイフが当たらないよう引き寄せてくれたらしい。
「あ?何だテメェ、ガキは帰れ‼︎」
チンピラが怒鳴りつけるが、少女の対応は冷静なものだった。
「帰れと言われても、業務終了時刻まで、まだかなりあるんですよ。それに、ガキではありません。」
突っ込むところを間違えている気がしなくもないが、どうやらこの少女が車掌らしい。
言われて見れば、廃都鉄道の駅員と同じ帽子をかぶっている。
でも、いくら車掌と言えども、少女一人でチンピラに勝てるのだろうか。
チンピラはなおも少女に怒鳴り続ける。
「ンなこと聞いてんじゃねんだよ!ジャマすんな!」
少女はゆっくりと告げた。
「…警告はしましたよ。」