消えない。
消えない。
消えない。
消えてほしいのに、一度知ってしまったら、もうはまって抜け出せない。
苦しくてもがいて、
あなたの"その他"になるのが嫌で、
みっともなく足掻いて、
それでも叶わない。
馬鹿みたいに
あの人のいちばんになりたい
って毎日毎日想って想って想っても、
とおくにとおくに
離れてしまってもうみえない。
寝る前に思い浮かぶ顔。
朝目覚めて思い浮かぶ顔。
ぜんぶぜんぶあなたで、
それなのにあやふやで思い出せない。
それならば、
いっそ見えないようにして、
遠ざけて。
遠ざけて。
だけどあなたはたやすく
わたしの眼のなかにとびこんで
ぐちゃぐちゃにかきまわして
こびりついて
あの日なんべんやってもとれなかった
フライパンの油汚れみたいに
しつこく残りつづける。
恋ってこういうことだから
それならばわたしはいらないのに。
それって一方的に押し付けられて、
あなたが私の眼に飛び込んできて、
離れなくてわたしは
もういいかげん
出て行ってほしいのに。
あなたが消えなくて、
今日もまっしろのノートを
消しゴムで消してみるけど、
みえないあなたがかくれんぼ。
どうしようもない。
それくらいにあなたが好きだから、
わたしは今日も
あなたをなぞった。