「…“カシミール”、2人を席に」
「あっはい」
来客と店主の話を聞いていたコドモは、ハッとしてイスから立ち上がる。
そしてカウンターの端から店内の座席が並んでいる方へ出ると、店の窓際の2人掛けテーブル席に2人を案内した。
「どうぞ」
木製のイスを引いて2人に座るようカシミールが促すと、老人はありがとうと言ってイスに座る。
しかし黒い外套のコドモの方は座ろうとしない。
「…あ、座っていいんですよ」
カシミールはそう笑いかけるが、相手は黙ったまま立っている。
なぜか座らない客に、カシミールは少し困惑した。
「あの…」
「あぁ、大丈夫だよ」
この子はただの人見知りだから、と老人は微笑む。
カシミールはついポカンとするが、老人が黒い外套の人物に座ってご覧と微笑むと、その人物は恐る恐るイスに座った。